計算前に、期間と費用の動き方をそろえる

固定費は、考えている売上の範囲では売上の増減にかかわらず発生するとみなす費用です。変動費は、売上の増減に応じて変わる費用です。ここでは変動費が売上に比例する、という単純化したモデルを使います。

家賃や定額の給与は固定費、販売量に対応する商品の原価は変動費の例です。ただし科目名だけで決めず、自社で何に応じて金額が変わるかを見ます。J-Net21のQ&Aでも、実際の費用は明確に分けにくいため、実情に合わせた分類が必要とされています。中小機構J-Net21「損益分岐点の計算方法と経営改善に向けた活用方法」

月の売上と年の固定費を混ぜてはいけません。月次なら売上、変動費、固定費を同じ月でそろえます。基本料金と使用量分が混ざる支出などは、内訳を調べたうえで分類の前提をメモします。判断が難しい項目は勝手にゼロにせず、確認が必要な費用として残しましょう。

損益分岐点売上高の計算式

使う式は次の3つです。変動費率を60%と求めた場合、式に入れるときは0.6と表します。

  • 変動費率=変動費÷売上高
  • 限界利益率=1−変動費率
  • 損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率

限界利益は、売上から変動費を引いた金額で、固定費をまかなうために残る部分です。J-Net21の起業マニュアルも、固定費と限界利益が等しくなる売上高を求める計算を示しています。中小機構J-Net21「損益分岐点を使った目標売上高」第1節

架空例:月商300万円、固定費96万円の場合

以下は独自に作成した架空例で、実在企業の実績ではありません。単位は万円、期間は1か月、金額はすべて税抜とします。営業利益を考えるため、支払利息など営業外の損益や、法人税等は含めません。元金返済も含めず、入出金の時期は別に確認する前提です。

売上300万円、変動費180万円、固定費96万円とします。価格と販売構成は変わらず、変動費は売上の60%、固定費は比較する売上の範囲で一定と仮定します。

変動費率は180÷300=0.6、限界利益率は1−0.6=0.4です。したがって、損益分岐点売上高は96÷0.4=240万円になります。

計算結果を確かめるため、売上高ごとに営業利益を再計算します。どの行も固定費は96万円です。

売上高変動費(売上の60%)営業利益
220132−8
2401440
30018024

240万円の行では、240−144−96=0。300万円の行では、300−180−96=24万円です。元の売上300万円と変動費180万円の差120万円は限界利益で、固定費を引く前の金額です。この120万円を最終的な営業利益と読み違えないようにします。

自社の数字で確認する5つの手順

  1. 目的と期間を決める。 例えば「直近1か月の営業利益がゼロになる売上」を見る、と決めます。
  2. 売上と費用の資料をそろえる。 同じ期間の損益資料を使い、費用の抜けや単位の違いを確認します。
  3. 固定費・変動費を分ける。 科目名だけでなく、売上との関係や契約内容を見て、分類理由を残します。
  4. 式に入れて計算する。 率は小数に直し、固定費と売上の金額単位を合わせます。
  5. 利益ゼロを確かめる。 求めた売上から、その売上に対応する変動費と固定費を引き、ゼロになるか検算します。

この手順と確認欄は本記事の編集上の提案です。計算欄の横に「期間・含めた費用・変動費率の根拠」を残すと、翌月に数字が変わった理由を比べられます。同じ式でも費用の範囲が違えば、結果をそのまま比較できません。

目標利益や固定費が変わると、必要な売上も変わる

目標利益を設定する場合は、固定費に目標利益を加えてから限界利益率で割ります。これはJ-Net21の起業マニュアルで示されている式です。中小機構J-Net21「損益分岐点を使った目標売上高」第2節

先ほどの条件で月40万円の営業利益を目標にすると、必要売上高は(96+40)÷0.4=340万円です。340万円の60%は204万円なので、340−204−96=40万円と確かめられます。これは目標達成を保証する予測ではなく、条件を置いた計算です。

別の比較として、変動費率60%のまま固定費だけが月12万円増えた場合、固定費は108万円、損益分岐点は108÷0.4=270万円です。同じ月商300万円でも営業利益は12万円になります。契約や人員配置を変える前に、どの前提が動くかを考える材料になります。

よくある質問

売上が増えれば、計算どおり利益も増えますか?

今回の式は変動費率と固定費が一定という仮定です。商品構成、値引き、仕入条件が変わる場合や、売上増加に伴って設備・人員が必要になる場合は、前提を見直して計算します。分岐点は固定した絶対値ではありません。

変動費率が100%以上ならどうなりますか?

固定費がプラスのモデルでは、売上から変動費を引いても固定費をまかなう金額が残りません。限界利益率がゼロなら割り算はできず、マイナスなら計算で出た負の売上を達成目標にはできません。分類や価格・原価の前提を確認する必要があります。

分岐点を超えたら、支払いも安心ですか?

この計算には、売上代金をいつ受け取るかや、借入元金の返済日が入っていません。利益と資金は分けて確認します。違いは利益が出ているのに現金がない理由で説明しています。

相談前には、分類に迷った費用も残す

同じ期間の損益資料、固定費・変動費に分けた一覧、計算の前提、確認したい経営上の判断をそろえると相談しやすくなります。分岐点の数字だけでなく、どの費用をどう扱ったかまで説明できることが出発点です。

初回相談無料・全国オンライン対応。 無料相談フォームまたはLINE公式アカウントから、お名前と相談したいことをお送りください。継続支援の内容・費用は別途ご案内します。情報確認日:2026年10月3日。

損益の数字に加えて入金と支払いの見通しも確認したい方は、資金繰り表の作成・活用の相談をご覧ください。

参考資料・確認日